ふつうのチャットAIは、質問に対して文章で答える。ところが、お客様からの問い合わせを担当部署に振り分けたり、写真に傷があるかを調べたりする仕事では、長い文章よりも「どれか1つ」「何%の確率か」という短い答えのほうが、プログラムに組み込みやすい。
Decisions APIは、まさにそうした用途のための入り口だ。OpenAIの開発者向けドキュメントによると、文章・画像(またはその両方)を読み、決まった型の答えを返す。OpenAIは、Responses APIより約10倍高速だと説明している。ただし、この速度の主張には具体的なベンチマーク(比較テストの数字)が添えられていないと報じられている。
報道によれば、この機能はDevDay 2026(9月29日)で先行紹介され、10月6日に誰でも試せる公開ベータになった。呼び出し先はPOST /v1/decisions、対応モデルはモデル名gpt-6-lunaのみだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開ベータの開始日 | 2026年10月6日(DevDay 2026の先行紹介は9月29日) |
| 呼び出し先 | POST /v1/decisions |
| 対応モデル | gpt-6-luna のみ |
| 入力できるもの | 文章、画像 (画像はbase64形式の埋め込みのみ。URL指定やファイルID指定は不可) |
| 料金 | 入力100万トークンあたり$0.10 出力・キャッシュの読み書きは課金なし |
| 正式版(一般提供) | 「数週間以内」の見込み(日付は未公表) |
| 企業向けの対応 | ゼロデータ保持・HIPAA対応(対象の顧客)、米国と欧州(EEA+スイス)でのデータ所在地指定 |
※ OpenAI開発者ドキュメント、Mixed、AI Weeklyの内容に基づく。ベータ版のため、仕様は今後変わる可能性がある。
Decisions APIでは、1つの質問ごとに答えの型を選ぶ。公式ドキュメントでは次の3種類が紹介されている。
score の点数は、段と段の「間」の値になることがある。OpenAIの例では、3つの段階の確率が0.1・0.7・0.2のとき、点数は1.1になる(段階の番号は0から数える)。つまり「ちょうど1段目」ではなく「1段目寄りだが、少し2段目の可能性もある」というニュアンスまで数字で出る。
1回のリクエストでは、同じ入力に対して複数の質問をまとめて投げられる。ただし、前の答えに依存する判断は別のリクエストに分ける必要がある。
「答えの形を決めたいなら、もうStructured Outputs(構造化出力)があるのでは?」と思う人もいるだろう。OpenAIのドキュメントは、両者の違いを次のように整理している。
Vercelの解説も、「形式が守られていることと、判断が正しいことは別」という点を指摘している。つまり、Structured Outputsの形式が合っていても、中身が間違っている可能性はある。Decisions APIは、その「どれくらい自信があるか」を数字で扱いやすくしたものと言える。
| 仕組み | 主な役割 | 答えの形 |
|---|---|---|
| Decisions API 公開ベータ | 判定・分類・採点 | 確率つきの固定された型 |
| Structured Outputs (Responses API) | 情報の抜き出し、説明文づくり | 自分で決めたJSONスキーマ |
| Function calling | ツールの実行を依頼する | 関数名と引数 |
公式ドキュメントとVercelの解説で挙がっている使い道は、どれも「次にどの処理へ進むか」を決める場面だ。
流れは図のとおりだ。入力を渡し、質問を投げ、確率つきで答えを受け取り、最後の行動は自分が決めたしきい値で分岐させる。「確率が0.8を超えたら自動処理、それ以下は人が確認」のように使うイメージだ。
開発者向けには、Vercelが対応を早くも公開している。AI SDKのバージョン7.0.128以降で、experimental_decideという関数からこのAPIを呼べるという。Vercel AI Gateway経由のモデルIDは「openai/gpt-6-luna-decisions」と案内されている。
便利そうに見えるが、現時点では注意したい点がいくつかある。
もう1つ大事なのが、確率は「正しさの保証」ではないという点だ。あるコミュニティの簡易テストでは、70%に偏ったコインで predicate が約70%と答えたのに対し、choice では約98%と出たとされる。これは非公式な1回のテストにすぎないが、数字をそのまま信じず、実例で確かめる重要性を示している。OpenAIも、人が確認した実例を使ってしきい値を決めるよう案内している。
| 確認項目 | 理由 | OpenAI・Vercelの案内 |
|---|---|---|
| 人が確認した実例でテスト | しきい値の決め方で誤判定の量が変わる | 誤判定の種類(見逃し・誤検出)ごとのコストを考えて決める |
| 人の確認ルートを用意 | 選択肢に正解がない・AIが断る場合がある | 「その他」や refusal の処理を設ける |
| 根拠となる情報も渡す | 注文記録や社内ルールがないと判断できない質問がある | 質問に必要な証拠を入力に含める |
| 権限の確認は別に行う | 分類結果は「許可」ではない | 実行する操作には従来の本人確認などが必要 |
| 速度と費用を実測 | 公表されている速度の比較数字がない | 誤判定の件数、人に回る割合、全体の遅延時間を測る |
Decisions APIは、AIに文章を書かせるのではなく、「判定係」として短い答えを安く速く返させるための道具だ。問い合わせの振り分けや書類の分類のように、答えの数が多く、1件あたりの費用を抑えたい場面に向いている。一方で、まだベータ版で、対応モデルの少なさやドキュメントの整備不足といった課題が残る。導入するなら、まず少量の実例で確率の傾向を確かめ、人が見る範囲を残しながら広げていくのが現実的だろう。なお、表の数字や仕様の多くはOpenAI自身の説明に基づくもので、独立した検証はこれからだ。
参考リンク: OpenAI開発者ドキュメント / Mixed / AI Weekly / Vercel