Museは、Metaが2026年9月8日に公開した「個人向けAIエージェント」だ。チャットで質問に答えるだけのAIではなく、航空券の予約、メール送信、フォーム入力、買い物の比較といった複数の手順が必要な作業を、ユーザーの代わりにこなすことを売りにしている。
Metaによれば、Museは同社が2026年4月に発表したAIモデル「Muse Spark」を基盤としている。利用者ごとにMetaのクラウド上に専用の仮想マシン(仮想のパソコン)が用意され、その中でエージェントが作業する仕組みだという。
利用の入口は、iPhone/Androidアプリ、Web(muse.ai)、WhatsAppの3つ。アプリ調査会社Apptopiaの推計として、公開から12日間で世界280万インストール、米国のモバイル日次利用者は約64万2,000人という数字も伝えられている(いずれもMetaの公式数値ではなく推計)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開日 | 2026年9月8日 |
| 種類 | 個人向けAIエージェント(作業を代行するAI) |
| 使われているAIモデル | Muse Spark(2026年4月発表) |
| 主な入口 | スマホアプリ・Web(muse.ai)・WhatsApp+Mac・Charm・AIグラス |
| 料金 | 多くの利用は無料。利用量に応じた有料プランあり |
| 利用状況 | 12日間で世界280万インストールApptopia推計 |
※ Meta公式発表、TechCrunch、The Rundown AI、tech-ishなど各社報道に基づく。
今回いちばん注目を集めたのが「Muse Charm(ミューズ・チャーム)」だ。大きさはAirPodsのケース程度とされ、キーホルダーのように持ち歩ける。ザッカーバーグCEOは、スマートグラスをかけていないときにMuseと話すいちばん速い方法になると説明したと報じられている。
報道によれば、Charmは約2インチの画面を備え、画面上にはアニメーションで動くMuseのキャラクターが表示される。指紋センサーで本人を確認して呼び出し、5G通信機能を備え、スマホなしでもMuseにアクセスできる設計と報じられている。USB-Cポートを搭載するとの報道もある。前後のカメラについてはBloombergが報じたものの、Meta自身は確認していない。
Connect 2026では、端末だけでなくMuse本体の機能強化も発表された。主なポイントは次の通りだ。
| 新機能 | できること | 提供時期 |
|---|---|---|
| Realtime Voice | 声を選べるリアルタイム音声会話 | 発表済み |
| Realtime Avatar | 表情のあるアバターとビデオ通話のように会話 | 発表済み |
| Macアプリ | デスクトップのアプリをMuseが代わりに操作 | 発表済み |
| 専用メールアドレス | Museをメールのやり取りに加えて処理を任せる | 近日 |
| AIグラス対応 | ウェイクワードで起動し、見ている物について質問 | 数カ月以内 |
| 新コネクタ | Walmart・Best Buy・Sephora・PayPal・Notion・GitHubなどと連携 | 順次 |
アバター機能について、Metaは自社評価でRunway CharactersやHeyGen LiveAvatarより総合的に好まれたと説明している。ただし「しぐさ」の比較ではRunwayとの間に統計的に明確な差はなかったとされ、あくまでMeta自身による評価である点には注意したい。
連携先(コネクタ)も大きく広がった。Meta公式発表では、Walmart、Best Buy、Gap、Sephora、Ulta、Wayfair、Shop Pay、PayPal、Instacart、Notion、Granola、GitHub、Boxなどが新たに名を連ね、Expediaも近く対応予定とされる。TechCrunchによると、開発者向けのコネクタ作成プログラムには1週間足らずで1,500件以上の応募があったという。
収益面では、Museは大量のトークンまで無料で使えるようにし、代わりに取引(買い物など)から小さな手数料を得る形を想定していると報じられている。
ハードウェアではメガネ型デバイスの新製品も相次いだ。目玉は「Meta VR Glasses」で、重さは約100g(トランプ1箱ほど)。Metaによれば初のIMAX Enhanced認証VRデバイスで、Prime Video、YouTube、Disney+、HBO Maxなどの映像サービスに対応し、ESPNやMLBなどと組んで年間100以上のスポーツ中継を没入型で配信する計画だという。価格は1,299.99ドル、発売は2027年春とされる。
普段使い向けのAIグラスも更新された。Ray-Ban Meta(Gen 3)は449ドルからで発売済み。12メガピクセルカメラはそのままに、3K動画、カスタマイズできるアクションボタン、最大9時間のバッテリーを備える。さらに、カメラを省いて軽量化した音声専用の「Ray-Ban Meta Audio」(349ドル、約43g、10月13日出荷)も登場した。
| 製品 | 特徴 | 価格(米国) | 発売時期 |
|---|---|---|---|
| Muse Charm | キーホルダー型・約2インチ画面・5G(報道) | 未発表 | 2026年12月予定 |
| Meta VR Glasses | 約100g・IMAX Enhanced認証 | 1,299.99ドル | 2027年春 |
| Ray-Ban Meta(Gen 3) | 12MPカメラ・3K動画・最大9時間 | 449ドル〜 | 発売済み |
| Ray-Ban Meta Audio | カメラなし・約43g | 349ドル | 10月13日出荷 |
| 聴覚サポート機能 | FDA認可のソフトウェア(対応AIグラスに追加) | 149.99ドル | 2026年後半(米国) |
※ 価格はいずれも米国での発表価格。日本での発売・価格は現時点で発表されていない。
このほか、画面付きのMeta Ray-Ban Displayは英国・カナダ・フランス・イタリア・ドイツへ販売地域を広げる。Metaは2026年末までにAIグラスの選択肢を100種類以上にする目標も掲げた。
今回の発表からは、Metaがスマホ・Mac・AIグラス・専用端末など複数の入口からMuseを使える環境を広げようとしていることがうかがえる。メガネ、キーホルダー端末、Macと入口を増やし、どこからでも同じMuseに仕事を頼める状態を目指している。
一方で課題もある。Charmは価格が未定で、報道ではまだ少数の試作機しかない段階とも伝えられている。スマホアプリで十分と考える人をどう振り向かせるかも問われる。また、カメラ付き端末やメール・買い物の代行は便利な反面、プライバシーや誤操作のリスクとも隣り合わせだ。AIエージェントに財布やメールを預ける前に、どこまで任せるかの線引きを自分で決めておくことが大切になる。
日本でのMuse対応時期については、現時点でMetaから明らかにされていない。今後の続報に注目したい。
チャットAIから「代わりに動くAI」へ。Metaは、そのAIをいつでも呼び出せる専用デバイスまで含めて囲い込もうとしている。OpenAIやGoogleもAIデバイスやエージェントに力を入れており、この年末商戦は「AIをどこで使うか」をめぐる競争の分岐点になりそうだ。
参考リンク: Meta公式(Connect 2026発表まとめ) / TechCrunch / The Rundown AI / tech-ish / WWD