「作りたいものを言葉で伝えると、その場でアプリの画面が動き出す」――そんな仕組みを、動画生成AIの大手Runwayが2026年8月31日に公開しました。名前は「Solaris」。Runwayはこれを、既存のチャットAIやノーコードツールとは別物の「Interface World Model(インターフェース・ワールドモデル)」という新しい種類のAIだと位置づけています。
この記事では、Solarisが具体的に何をするものなのか、なぜ「コードを書かない」と言えるのか、どんな性能が示されているのか、そして今使えるのかどうかを、専門用語をかみくだいて整理します。数値はすべてRunwayの公式発表と、それを報じた複数メディアに基づいています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表元/発表日 | Runway(米国のAI企業)/2026年8月31日(公式リサーチ発表) |
| 名称・分類 | Solaris。新カテゴリ「Interface World Model」の第1弾と説明されている |
| できること | アプリ・Webサイトの画面を、コードを介さず1フレームずつリアルタイム生成 |
| 基盤モデル | Runwayの動画生成モデル「Gen-4.5」を応用 |
| 解像度 | 720p。「インタラクティブに感じる速度」で生成するとされる |
| 提供状況 | フォームからの早期アクセス申請制。公開ローンチ時期・価格は非公表 |
ふつう、AIにアプリを作らせるときは「AIがHTMLやJavaScriptなどのコードを書き、そのコードをブラウザが動かして画面が表示される」という順番をたどります。Solarisはこの間の「コード」を丸ごと飛ばします。Runwayの説明によれば、Solarisは「次に画面がどう見えるか」と「次に画面がどう振る舞うか」を直接生成し、HTMLやJavaScriptといったコードを中間表現として介さずにインターフェースを描くとしています。
できあがったアプリは、ファイルやプログラムとして存在するのではなく、AIが連続して描き出す映像(画像ストリーム)としてだけ存在します。ユーザーがボタンを押すと、その操作が次のフレームを生成するための「条件」としてAIに渡され、AIが押された後の画面を描く――この繰り返しでアプリが「動いているように見える」わけです。Runwayは公式発表で「操作するたびに1フレームずつ合成され、インターフェースがあなたの行動に応じて連続的に反応する」と表現しています。
Runwayが使う「ワールドモデル」という言葉は、もともと「AIが世界の見た目とルールを理解し、次に何が起きるかを予測する」タイプのモデルを指します。ゲームエンジンのように、入力に応じて次の場面を作り出すイメージです。
Runwayは、Solarisをこの考え方の応用だと説明しています。つまり、検索エンジンのように「物事を知っている」仕組みと、ゲームエンジンのように「操作に即座に反応する」仕組みを組み合わせ、「意図をくみ取りながら、対話できる画面を描き続けるAI」を目指したものだとしています。従来の動画生成が「テキストの指示に沿って映像を進める」のに対し、Solarisは「ユーザーの操作に沿って映像を進める」点が違う、という整理です。
Solarisは、Runwayが動画生成ツールで使っている「Gen-4.5」というモデルの上に作られています。動画モデルは「あるフレームの次に、どんなフレームが自然につながるか」を学習しているため、この性質を画面の生成に転用できるとRunwayは説明します。Solarisはそこに「テキストの指示ではなく、ユーザーの操作を次のフレームの手がかりにする」というループを足した、という位置づけです。
速度とコストについては、解像度720pで「インタラクティブに感じられる速度」でフレームを生成し、標準的な動画生成(動画拡散モデル)をリアルタイムで動かす場合と比べれば「桁違いに安く動かせる」とRunwayは説明しています。もっとも、一度作れば使い回せる通常のWebページより安いという意味ではなく、Runway自身も「毎フレームを生成するのは、一度作ったページを配信するより高くつく」と認めています。あわせて、遅延が「およそ0.5秒程度」になると操作が「インタラクティブに感じられなくなる」と説明されており、この体感速度をどこまで詰められるかが実用性のカギになりそうです。ただし具体的なフレームレートやサーバー構成、実測の応答時間は公開されていません。
Runwayは、Solarisが作った画面と、別のAI(Claude Opus 5)に同じ要件でコードを書かせて作った画面を並べ、どちらが良いかを人に選んでもらう調査を行ったと説明しています。参加者は250人、インタラクションの例は30種類、比較の判定はのべ約7,500件です。
結果として、「指示したとおりに動くか」ではSolarisが61%、コード実装が24%(残りは差なし等)、「操作感が自然か」ではSolarisが71%、コード実装が21%で、いずれもSolarisが選ばれたとされています。さらに、スクリーンショットからUIを再現させる別のテストでは、Claude Fable 5・GPT-4o・Gemini 2.5 Proといった複数のマルチモーダルモデルを比較対象にし、画面の視覚的な複雑さが増すほど、再現の忠実度が下がる傾向が示されたと報告しています。
| 評価項目 | Solaris | Claude Opus 5が書いたコードの画面 |
|---|---|---|
| 指示への忠実さ(選ばれた割合) | 61% | 24% |
| 挙動の自然さ(選ばれた割合) | 71% | 21% |
| 調査の規模 | 参加者250人/インタラクション例30種/のべ約7,500件のペア比較(Runway実施) | |
| UI再現テストの比較対象 | Claude Fable 5・GPT-4o・Gemini 2.5 Pro(複雑さが増すと再現の忠実度が低下する傾向) | |
ここ数年で「AIにアプリを作らせる」手段はいくつも登場しました。ChatGPTやClaudeにコードを書かせる方法、v0やCursorのようにコード生成に特化したツール、GUIで組み立てるノーコードツールなどです。これらはいずれも最終的に「動くコード」が手元に残ります。
Solarisはこの点が根本的に違います。生成物はコードではなく「描かれ続ける画面」なので、少なくとも現時点の公開情報では、生成したインターフェースをコードとしてエクスポートし、自分のサーバーで運用する機能は案内されていません。試作品をすばやく触って検討する、アイデアを見た目で共有する、といった用途では強い一方、確定した仕様を製品として作り込む工程には、まだ別の道具が必要になりそうです。実際、Runway自身も文字の可読性や長時間セッションでの一貫性、既存ソフトとの統合、アクセシビリティなどを未解決の課題として挙げています。
| 観点 | 従来のAIアプリ生成(LLMがコードを書く/ノーコード) | Solaris |
|---|---|---|
| 生成されるもの | HTML・JavaScriptなどのコードや設定ファイル | コードなし。生成され続ける画面(映像) |
| 操作への反応 | 書かれたコードのとおりに動作 | 操作を手がかりに次のフレームをAIが描く |
| 成果物の持ち出し | コードを取り出して自前で運用できる | 現時点では画面ストリームとして体験する形 |
| 向いている場面 | 仕様を固めた製品開発、既存システムへの組み込み | 試作・デモ・アイデアの見た目共有 |
2026年8月31日時点で、Solarisは一般公開されていません。Runwayの発表ページにある申請フォームから早期アクセスを求める形で、価格や一般提供の時期は示されていません。Runwayは「主要パートナーと組んで、Solarisを公開ローンチする作業を進めている」としています。
Solarisが動画モデルGen-4.5の延長線上にあることを踏まえると、まずはRunwayの既存ユーザーやクリエイティブ用途から広がる可能性があります。一方で、720pという解像度や約0.5秒の遅延の壁、そして「コードとして持ち出せない」という制約をどう扱うかは、実際に触れるようになってから評価が固まる部分です。現段階では「新しい方向性のデモが出た」という受け止めが妥当でしょう。
この記事のまとめです。
Solarisが示すのは、「アプリ=人が書いたコードが動くもの」という前提を外して、「アプリ=AIが描き続ける画面」と捉え直す発想です。実運用に耐えるかはこれからの検証しだいですが、試作やデモの作り方を変えうる一手ではあります。動画生成で先行してきたRunwayが、その技術を「使うためのソフトウェア」そのものに向けてきた点は、今後のAIツールの競争軸を占ううえでも注目に値します。