Googleの次期フラッグシップモデル「Gemini 3.5 Pro」は、2026年5月のGoogle I/Oで発表された際、「翌月(6月)リリース予定」と説明されていた。しかし6月中の公開は実現せず(1度目の延期)、報道では目標が7月17日に見直されたとされる。
ところがその7月17日も、7月15〜16日ごろの時点で「達成できない」と複数メディアが報道。これでGemini 3.5 Proは3度目の延期(6月見送り→7月17日見送りに続く3度目)を迎えたとみられている。Googleから正式な新しいリリース目標は、本稿執筆時点でまだ発表されていない。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年5月(Google I/O) | Gemini 3.5 Proを「翌月リリース予定」と発表 |
| 2026年6月 | 目標未達 リリース目標を7月17日に再設定 |
| 2026年7月15〜16日ごろ | 3度目の延期が判明 7月17日目標も達成不可能に |
| 2026年7月21日 | 代替モデル投入 Gemini 3.6 Flash・3.5 Flash-Liteを緊急リリース |
報道によると、当初のGemini 3.5 Proは「再帰的なツール呼び出し(recursive tool calling)とSVG生成に構造的な欠陥があり、ファインチューニングでは修正できない」と判断され、モデルごと廃棄されたという。そこから土台を作り直す、事実上の再構築が行われた。
だが再構築後も問題は解消しなかったと報じられている。幻覚(ハルシネーション)や矛盾した出力が目立ち、コーディング性能も内部目標に届いていないとされる。さらに気がかりなのは、「新しいチェックポイントが古いものより性能が低下している」という報告だ。通常、学習を重ねるほど性能は改善していくはずで、一部では学習プロセス自体に課題がある可能性も指摘されている。
本命モデルの遅れを埋めるため、Googleは7月21日にGemini 3.6 FlashとGemini 3.5 Flash-Liteを同時投入した(Gemini 3.5 Flash Cyberはパイロット段階)。価格面では、出力料金が100万トークンあたり9.00ドルから7.50ドルへ16.7%引き下げられ、入力料金は100万トークンあたり1.50ドルとなっている。
効率面でも改善が大きい。Artificial Analysis指数によると、Gemini 3.6 Flashは旧世代の3.5 Flashに比べて出力トークン数を平均17%削減し、DeepSWEというコーディング系タスクでは最大65%もの削減を達成しているという。
| ベンチマーク | 3.5 Flash | 3.6 Flash | 変化 |
|---|---|---|---|
| DeepSWE(コーディング実務) | 37% | 49% | +12pt |
| MLE Bench(機械学習実装) | 49.7% | 63.9% | +14.2pt |
| OSWorld-Verified(PC操作) | 78.4% | 83.0% | +4.6pt |
※ 数値は各種報道時点のもの。ベンチマーク条件により変動する可能性があります。
今回の一件で目を引くのは、軽量版であるFlashの世代番号が、フラッグシップのProより先行してしまったという異例の事態だ。本来「3.6」はProの後継として使われるはずの番号だが、Proがまだ「3.5」のまま出せていないうちに、Flash側が先に「3.6」を名乗ることになった。
Googleはこの3.6 Flashを主力(workhorse)モデルと位置づけているが、市場では本命Proの遅れを埋めるための投入ではないかとの見方も出ている。将来的には次世代の「Flash」系列だけでなく、フラッグシップ側も含めた世代整理が必要になりそうだ。研究者の流出は報道されており、Google DeepMind内部の開発体制に課題があるとの見方をする向きも一部にある。
Gemini 3.6 Flashは軽量・高速モデルという位置づけのため、比較対象も各社の廉価〜中位モデルになる。OpenAIのGPT-5.6シリーズでは最も安価な「Luna」、AnthropicのClaude Sonnet 5と並べると、Gemini陣営の価格競争力の高さがうかがえる。
| モデル | 入力料金 | 出力料金 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| Gemini 3.6 Flash | 1.50ドル | 7.50ドル | つなぎの軽量モデル |
| GPT-5.6 Luna | 1.00ドル | 6.00ドル | 最速・最安の廉価版 |
| Claude Sonnet 5(導入価格) | 2.00ドル | 10.00ドル | 中位のエージェント向け |
※ 各社の料金は報道・公式発表時点のもの。期間限定の導入価格を含む場合があります。今後変更される可能性があります。
単純な料金だけを見ればGPT-5.6 Lunaが最安だが、Gemini 3.6 Flashはベンチマークの伸び幅が大きく、コストパフォーマンスの面では十分競争力があると言えそうだ。ただし、あくまで比較対象は各社の軽量モデルであり、フラッグシップ同士の性能比較(Gemini 3.5 Pro vs GPT-5.6 Sol vs Claude Opus級)は、Gemini 3.5 Proの登場を待つ必要がある。
Flash系モデルの数字だけを見ると着実に進化しているように見えるが、報道を総合すると、フラッグシップであるGemini 3.5 Proは3度延期を重ねている格好だ。Googleの次の焦点は、いつ・どんな性能でGemini 3.5 Proを送り出せるかに移っている。GPT-5.6やClaude Sonnet 5との本格的な性能勝負は、Pro登場後に持ち越しとなりそうだ。
参考リンク: Enterprise DNA/ Tech Times/ XenoSpectrum